シュラ様御凱旋
(シュラさま おんがいせん)

第二話「夏の日差しに呪われて」




*キャラ表*

シュラ様  訳あって「じじい」を始末する為に引っ越してきた。 
 ヴィアさん 訳あって不死身の執事 


--------------------以下本文



【SE*蝉の音フェードイン】
【SE*蝉の音フェードアウト】

シュラ「…ヴィアよ」
ヴィア「…はっ」
シュラ「…近くに寄れ、内密な話だ」
ヴィア「は…何でございましょう(軽く緊張して)」
シュラ「…私は、…どうも呪いを受けたらしい(額を押さえて)」
ヴィア「(息を呑む)な、なんですって…!?」
シュラ「…黒魔術連盟の何者かの仕業か…(至極深刻な表情)」
ヴィア「まさか、ゴシックタウンを遠く離れたこの人間界にまで影響を…!?」
シュラ「そうだ。…この呪いは…私を心底病ませる(ため息)」
ヴィア「…恐れながらシュラ様」
シュラ「何だ」
ヴィア「ゴシックタウンからでも呪いが届くなら、この世界から逆に呪いを返すことも――」
シュラ「馬鹿者。それができないから、私は悩んでいるのだ」
ヴィア「なんとそれほどまでに強力な呪いを…!」
シュラ「(首を振る)いや、呪いの元がわからないのだ。どこから呪いが放たれているのか一向に探知できない。…ヴィア、私は苛々している。一つ、蹴らせろ」
ヴィア「どうぞご自由に――」
【SE*わりと激しい打撃音】
ヴィア「がはぁっ…ぐふっ……ああシュラ様…か、顔はやめてください、顔は――あぁっ………(ごく普通に戻って)気は、お済みになりましたか」
シュラ「募るばかりだ」
ヴィア「お役に立てず申し訳ございません(頭を下げる) …ちなみに、呪いはどのようなものでしょうか。何か私(ワタクシ)にもお役に立てることがあれば…」
シュラ「…頭が痛いのだ」
ヴィア「…は(目をぱちぱち)」
シュラ「食欲が無い」
ヴィア「…」
シュラ「起きてからベッドを出るまでに時間がかかる」
ヴィア「…」
シュラ「気力がおきない。体がだるい。眠りが浅く、何度も目が覚める。目の下のクマがひどい。食欲が無いかと思えば、突然肉を貪りたくなる。……(足を組みなおし)…実に卑劣な呪いだとは思わないか、ヴィアよ」
ヴィア「…恐れながら申し上げます」
シュラ「ああ」
ヴィア「それは呪いではないかもしれません」
シュラ「…何…だと…」

ヴィア「この人間界、とくにこの四季のある国日本には、夏という季節があります。この夏という時期にアテられ、体調を崩すことを夏バテと聞き及びます。…おそらくは、この夏バテではないかと」
シュラ「…呪い、ではないのか…(ほぉ、と感心)」
ヴィア「は、夏バテに御座います」
シュラ「…わかった。夏バテはどのような黒魔術で打ち消せばいい?」
ヴィア「(ページをめくりながら)こちらの黒魔術大全によりますと……シュラ様ァ!」
シュラ「何だ」
ヴィア「夏バテに対抗する術は、記載されておりません!(ズダァンと机に手をつき)」
シュラ「不治の病だというのか…くっ…! 我が野望、此処で断たれるなどと…」
ヴィア「ご安心下さいませシュラ様! 即刻、人間界の医学大全を手に入れ、対策を講じて参ります!」
シュラ「…事は、一刻を争う(厳かに)」
ヴィア「はっ!」

【間】

【SE*扉がバタンと開く音】
ヴィア「シュラ様ァ!」
シュラ「騒がしいぞ、ヴィア」
ヴィア「夏バテに対抗する薬を手に入れて参りました! お飲み下さい、どうか…!」
シュラ「よくやった。 (ラベルを読む)…これは…『ジヨウキョウソール』…?」
ヴィア「栄養ドリンクとやらを摂取することで、夏バテに対抗できるとありました」
シュラ「成る程。この人間界には、余程優秀な薬使いが居るようだな…」
【SE*きゅぽっ、と蓋を外す音】
【SE*ごっくん、と飲む音】
ヴィア「…シュラ様、いかがでしょう」
シュラ「…ヴィアよ、…これは、苦いかと思えば甘い」
ヴィア「はっ…」
シュラ「甘いかと思えば苦い。…確かに力のみなぎりそうな薬品ではある。…しかし同時に、何とも言えない鬱屈がこみあげてくる。…一つ、蹴らせろ」
ヴィア「あっ、シュラ様…ど、どうか顔だけは…顔だけは蹴らないで…あああっ!」


ヴィア「…気は、お済みになりましたでしょうか」
シュラ「募るばかりだ(頬杖)」
ヴィア「まこと、申し訳ございません」


【SE*蝉の音フェードイン】
【SE*蝉の音フェードアウト】





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-ukhm-

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