シュラ様御凱旋
(シュラさま おんがいせん)

第一話「この世界はあまりにも窮屈」




*キャラ表*

シュラ様  訳あって「じじい」を始末する為に引っ越してきた。 
 ヴィアさん 訳あって不死身の執事 


--------------------以下本文


【状況*庭先へ肥料を持って出てくるヴィアさん】

ヴィア「…ふー…今日もいい天気ですね…。…あ、これはこれは山田さんの奥様…どうもこんにちは、いえいえ、奥様こそお元気そうで…。…ええ、庭いじりです、はは、ええ、ちょっとした趣味でして…」

ヴィア「…何を育てているか? …えーと、えー…花でございます。…何の花か? …というのはですね、…ええ、ちょっと詳しくは…花屋さんで適当に選んだ花ですので…ええ。…ええ、暑くなりそうですからね、奥様も熱中症には十分お気をつけて、ええ、さようなら、ごきげんよう…!」

ヴィア「…(奥さんが行った事を確認してから、ぼそりと独り言)…やはり、まずいよな…」

【SE*絨毯の上を歩く音】
【SE*とんとん、と重厚な扉をノックをする音】

ヴィア「シュラ様、…シュラ様」
シュラ「(部屋の中から)…何か用か」
ヴィア「至急の用でございます」
シュラ「…入れ(面倒くさそうに)」

【SE*がちゃり、と扉を開ける音】 

ヴィア「あの、シュラ様。やはり大変申し上げにくいのですが」
シュラ「…では、言うな」
ヴィア「事は深刻です、シュラ様」
シュラ「述べてみよ」
ヴィア「は。……シュラ様とわたくしは、長くゴシックタウンにて生活をして参りました」
シュラ「…うむ」
ヴィア「しかし、この度、シュラ様のおじい様の行方を探されるため…
シュラ「じじいを見つけだして始末する為だ(あっさりと」
ヴィア「…えー…(言葉を探し)…その、大きな目的の為、ゴシックタウンを離れ、人間の世界にやってきたわけでありますが」
シュラ「…うむ」
ヴィア「この世界は、実に平和です。…魔術やゴシックタウンの事など、誰も知らぬ世の中のようです」
シュラ「…驚嘆だな」
ヴィア「実に。…人間たちの世界にはゴシックタウン同様に園芸という文化もあり、シュラ様もまた、お庭で、園芸に勤しまれていることと存じますが」
シュラ「…ああ。 (眉を寄せ)……ヴィア、何が言いたいのだ」
ヴィア「育てている花の種類です(きっぱりと」
シュラ「…マンドラゴラがどうかしたのか(首を傾げる)」
ヴィア「シュラ様! マンドラゴラは! この世界の民家の庭先で、栽培するものではないのです!(我慢できない様子で、大声ではっきりと)」
シュラ「…なんだと(表情には出さないが驚く)」
ヴィア「わたくしにも落ち度があります、マンドラゴラはこの世界に当たり前に存在するものではないと、花屋ではそうそう売ってはいないと、早く知るべきでした!(くぅっ、と悔しそうに)」
シュラ「…マンドラゴラを育てずに、この世界の住人はいかにして隣の家に嫌がらせをするのだ(真顔で」
ヴィア「そもそも、マンドラゴラを隣の家に投げ込むという嫌がらせの文化も無いようでございます」
シュラ「…平和ボケした世の中だ」
ヴィア「実に」
シュラ「…ではマンドラゴラは、育てられないのか(少ししゅんとして」
ヴィア「この世界においては、自分で歩き叫びまわる植物は珍しいようであります」
シュラ「…仕方がない、マンドラゴラの鉢は、ゴシックタウンに送り返せ。あちらの家の庭に植え直しておけばよいだろう」
ヴィア「恐れ入ります。…シュラ様におかれましては、この世界で生活する上では非常に窮屈な思いをなされるかと思います。…が、どうぞ寛大な心でもって、出来るだけ人間界では目立たぬ生活を――」

【SE*ぴんぽーん、と宅配便の音】

ヴィア「はて」
シュラ「…ゴシックタウンからの宅配便だろう」
ヴィア「宅配便? …引っ越しの荷物はもう全て――」
シュラ「…数日前、ゴシックタウン通販でペットを購入した」
ヴィア「ペットでございますか。なるほど、この世界では愛玩動物として、イヌやネコ、と呼ばれる生物を飼う風習があるそうですね。ごく普通の家庭として溶け込むには丁度よいかと思われます」
シュラ「…ヴィアよ、イヌやネコでなければならないのか?」
ヴィア「いえいえシュラ様、イヌやネコ以外にも、ウサギ、カメ、ネズミ、豚、羊など、様々な動物や魚類をペットにする習慣があるそうです。…して、シュラ様。通販で何を購入されたのですか」
シュラ「グリフォンだ(あっさりと」
ヴィア「グリフォン…!(頭を抱えて」

(間)


【状況*庭先で木材を並べているヴィアさん】

ヴィア「あ、これはどうも坂本さんの奥様…ああ、これは、ペットの小屋を作っているのでございます、はは、…ええ、少し大きめの…え、何を? 何を飼うのか、と言われますと…あの…グリフォ…犬でございます! 犬です、そう、…大きいのでございます、大型犬でございます、身の丈二メートルもありますので…ええ…はは、最近の犬は随分と品種改良がええ、はは、そうなのでございます、品種改良が…ええ…」

【SE*ばたばた、と廊下を駆ける足音】
【SE*バタンと扉を開ける音】

ヴィア「シュラ様! グリフォンは! やはり、民家の庭先で飼えるものではありません!」
シュラ「…何かと窮屈な世界だ(ため息)」
ヴィア「実に(厳かに」





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-ukhm-

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