HNG 〜ハギー に GODの導きがありますように〜
萩山 | 2年3組担当の先生 |
今井 | 観察力が鋭い |
川中島 | 笑い上戸。笑い出すと止まらない。牛乳を飲んでいるとき、よく狙われる。 |
佐藤 | 2年1組担当の先生。 |
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【状況*夕暮れの中の教室】 【SE*学校のチャイムの音】 萩山「…今井(いまい)、川中島(かわなかじま)。…全く、これで何度目だ?」 萩山「何回、居残られてまで説教されてんだって聞いてるんだよ」 【SE*机をドンと叩く音】 萩山「今井、まだ反省が足りないか?」 今井「…いえ(さらりと」 萩山「川中島、お前も、反省文だけじゃ物足りないか?」 川中島「…そんなことは…(しゅんと俯き」 萩山「いいか、学校の風紀っていうのは、生徒1人1人が守ってこその風紀だ。誰か1人が乱せば、それを見た他の人間も、じゃあ私もあれぐらいいいか、と真似してしまう。そうして、全体の風紀の乱れに繋がる。つまり――」 【SE*ピンポンパンポン】 佐藤「萩山(はぎやま)先生、萩山先生、職員室までお越しください――」 萩山「ん? …話の途中だってのに…。…おい、今井、川中島。ここでじっと待ってるんだぞ。…ったく…」 【SE*がらり、と扉が開いて閉まる音】 (教師が去ったことを確認する、少しの間) 今井「…ふー(やれやれ、と言った様子で」 川中島「なんか今日の萩山(はぎやま)、やたらと調子入ってない?(今井の方を向いて」 今井「風紀強化週間とかいって、自分で自分にハッパかけて自滅してんでしょ」 川中島「…ま、運が悪かったと思うしかないね(軽い溜息」 今井「そういうこと(面倒そうに) …ま、常習で目をつけられてる俺が捕まるのはしょうがないとは思うけど、無事故無違反のお前は…災難だったな(少し同情して」 川中島「あーあ、なんで今日に限って抜き打ち持ち物検査だったかなぁ…(失敗した、という表情で」 (少し間) 今井「…ところでさ」 川中島「ん、何?」 今井「川中島、見た?(思わせぶりに」 川中島「…何を?(きょとんとして」 今井「…萩山の顔」 川中島「え? …どういうこと?」 今井「…あー、お前の方向からは見えなかったかな…」 川中島「え、なに、何が?」 今井「あれだよ、あれ」 川中島「どれ?」 今井「…鼻毛」 川中島「…え?」 今井「萩山の、向かって右の鼻の穴。…鼻毛、出てただろ」 川中島「…っ…(思い出して吹き出し、こらえながら) …そういや、…出て、たね…っ。ちょっと思ったけどさ…!」 今井「出てたよな(あっさりと」 川中島「うん」 今井「…わりと、にょきっと」 川中島「ちょ、ちょっと、擬音つけないでよ…!(笑いを堪えながら)」 今井「いやー、綺麗に出てたよなー、漫画みたいだった」 川中島「やめて、今井、やめて…(苦しそうに」 今井「普通鼻毛が見えてるって言ったって、せいぜい4ミリとかだろ。…あれ、8ミリはいってたな。どう見積もっても7ミリは固かった(まじまじと」 川中島「やめて、本当に…!」 (少し間) 川中島「…はーあ…(やっと笑いの衝動を抑えて」 (少し間) 今井「(川中島の様子を見ながら話すタイミングを窺い)…でさ」 川中島「うん(若干構えて」 今井「…その鼻毛がさ」 川中島「え、うん…」 今井「俺の方から見るとさ」 川中島「うん…(何故かどきどきしながら」 今井「…見えたんだよね(あっさりと」 川中島「え、何が?」 今井「見えたんだって」 川中島「…何が?」 今井「…枝毛になってるの。先端が」 川中島「ぶはっ(思いっきり噴いて) …ちょ、ちょっと、待って…それ、本当に?(クツクツ笑いを堪えながら)」 今井「ああ(深刻に頷き) …見た」 川中島「えだ、えだげ…(笑いを抑えるあまりヒクヒクしながら)」 今井「わりと綺麗な二股だったぞ。右の穴からこんにちはして、ぱっきり別れてな。あれが、あの鼻毛たちの運命の分かれ道って奴だったんだろうな」 川中島「やめ、やめて…!(口元を手で押さえながら)」 今井「まさか、あのDNAも、生まれた時にまさかまさか鼻毛に生まれてるとは思ってなかっただろうに」 川中島「だから、ほんと、おねがい、今井、もう、やめて…!(両手で口元を抑えながら)」 今井「…鼻毛サプライズ、か…(夕陽の方を見ながら)」 川中島「ぶっ…!(もう1回吹き出し、大声を出さないよう堪えて)やめて…! やめてよ…!」 【SE*近づいてくる足音】 今井「…お、帰ってきたっぽいな(少し小声で」 川中島「え、…あ、本当だ(やばい、という顔で」 今井「おい川中島。絶対、絶対に萩山の鼻毛には注目するなよ。絶対見たらだめだからな。絶対凝視するなよ。間違っても、鼻毛の枝毛を意識するなよ。絶対だぞ、絶対見るなよ!(真面目な顔で煽る)」 川中島「もういい、もういいからぁ!(必死の様子で」 【SE*がらりと扉の開く音】 萩山「(舌打ちしながら入室) PCの再起動ぐらい自分でやれっての…。…おいお前ら、ちゃんと反省してたか?」 今井「…はい(殊勝な様子で」 川中島「…は、…はい…(萩山の鼻を意識しないように我慢しながら)」 荻山「今井、特にお前は風紀違反の常習犯だ。…もう、何度もこんな説教受けてんだから、分かってるな?」 今井「はい。…今までの自分は、反省が足りませんでした。これからは、規則をきちんと守り、他の生徒たちの模範にもなり得るよう、努力したいです(すらすらと」 萩山「まぁ、お前はいつもそんな事を言って逃れているんだろうが、そんな――」 今井「いえ、今度こそ、模範という面において――(ちら、と川中島を見て、わざとらしく)他よりも、1本、抜きんでた、1本、飛び出た、生徒になりたいと思います」 川中島「ぶっ…けほっ(噴いてしまったのを咳払いして上手く誤魔化す)」 萩山「おい川中島、…どうした?(片眉をあげて」 川中島「い、いいえ…」 今井「鼻に、かかったような言い方ですみません(鼻に、をわざと強調して」 川中島「げほっ、ごほっ!(激しい咳をして俯く。若干肩が震えている」 萩山「(ため息)いいか今井、反省の言葉もいいが、反省というのは態度で――」 【SE*ピンポンパンポン】 佐藤「萩山先生、萩山先生、職員室まで――」 萩山「ったく、またか…。…お前ら、反省文の内容でも考えておけよ」 今井「…はい」 川中島「はい」 【SE*がらり、と扉が開いて閉まる音】 (教師が去ったことを確認する、少しの間) 川中島「何するんだよ、今井!(怒りと困りと笑いを足して割ったような表情で、バシッと今井の肩を叩く」 今井「別に、何も。反省の言葉を言っただけだし(ふふん、という顔で」 川中島「もう…」 (少し間) 今井「…ところでさ」 川中島「何」 今井「…見た?」 川中島「鼻毛だろ? 目ぇやらないようにするので大変だった」 今井「違う、そっちじゃない」 川中島「え、どれ?」 今井「…ていうか、気づいた?」 川中島「何が?(若干ドキドキしながら」 今井「少し前から噂になってるんだけどさ」 川中島「え、うん…」 今井「萩山って、やっぱズラだよな」 川中島「ぶはっ!(盛大に吹き出し) …ちょ、ちょっ、何言って…」 今井「いやぁ、至近距離で確かめて、確信した。…あれ、ズラだ」 川中島「え、まって、見てなかった…」 今井「よーくみるとさ、下の方とか横髪とかはわりと萎びた髪の毛なんだけど、頭頂部にかけてはツルッツルの艶やかな髪なんだよね」 川中島「そんな…」 今井「普段は境目わかんないけどさ、夕方にもなると、地肌? の方の整髪剤が効き目落ちるんだろうな。しんなりしてる髪と、シャーンとしてる髪の差が激しいわ。まぁ、よく見ないとだけど」 川中島「…確かに、萩山って無駄に髪の毛黒々してるような気がしてたけど…」 今井「絶対そうだろうな、あれ…。…で、…誰にバラそうかな…」 川中島「…楽しそうだな、お前」 今井「まぁ、そこそこ。…でもまぁ、早くは帰りたいかなぁ」 【SE*近づいてくる足音】 今井「…あ、ハギーだ」 川中島「なんだよハギーって」 【SE*がらりと扉の開く音】 萩山「(舌打ちしながら入室)インストールの意味ぐらい調べろよな…。…さて、…そろそろ反省も浸透したか?」 今井「はい」 川中島「…は、はい…」 萩山「いいか。…俺は――」 【SE*携帯の着信音】 萩山「…ったく…」 【SE*数歩移動する足音】 萩山「(2人に背を向け)…ああ、もしもし?」 今井「…て、る…(ぼそぼそと口の形だけで何かを伝えようとする)」 川中島「(小声で)え、なに?」 今井「れ、て、る」 川中島「え?」 今井「ず・れ・て・る」 川中島「え、そんな――(萩山の後頭部を見て)ブフッ…! …っく…嘘だ…あんな…あんなひどい…嘘だ…」 今井「あれは酷い」 【SE*ピッ、と通話を着る音】 萩山「…あー、それで、だ。…いいか、2人とも。…俺は、お前たちが規則を破ったことを怒っている。しかし、それ以上に悲しいことがある。…それは、規則で持ってきてはいけないものを校内に持ち込もうとしたこと。…いいか、嘘は、この世で最も恥じるべきことだ(強い口調で」 今井「…確かに、嘘をつき、人を欺くことはよくないことだと思います。僕も、嘘をつく大人にだけは、絶対に、なりたくありません」 萩山「…本当だな(今井の目を見て」 今井「もちろんです。僕は、嘘を、被る事は、しませんから」 川中島「くっ…げほっごほっ」 萩山「…では、2人とももう帰れ。すみやかに、だ」 今井「はい」 川中島「…はい」 【SE*歩く足音】 今井「それじゃ」 川中島「ああ」 (少し間) 川中島「なぁ、今井!(呼びかけ」 今井「ん?」 川中島「…なんかお前、…にやにやしてないか?(若干予想がつきながら」 今井「…んん? …別にぃ?(ニヤニヤしながら) まあ、明日からの学校生活が楽しみ、ってところだな。…じゃ(軽く手を振って」 川中島「(萩原の事を思って)…萩原、気の毒に…。……でも、ないか」 【SE*去って行く足音】 |
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-ukhm-
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